資本主義って何だ!?(1)~日本が絶対に財政破綻しない理由~

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2016年12月末の国債と借入金、政府短期証券の合計残高は1066兆4234億円で、前年から21兆8330億円増えて過去最高となった。17年1月1日時点の総務省の人口推計(1億2686万人、概算値)で単純計算すると国民1人当たり約840万円の借金を抱えていることになる。

引用:『国の借金、過去最高の1066兆円 16年末』,「日本経済新聞 電子版」,日本経済新聞社,2017年9月12日アクセス

 「国の借金~兆円」「国民一人当たり~万円の借金」といったフレーズは、もはや日本人なら誰もが耳にしたことのある決まり文句だろう。そしていよいよ日本の財政破綻が迫っていると考える人も多いのではないだろうか。そんなお決まりのフレーズも、もう20年以上叫ばれ続けている。

しかし、日本は未だに破綻していない。一体いつになったら破綻するのだろうか。政府が必死になって粘っているのだろうか。それとも着々と「Xデー」が近づいているのだろうか。

結論から言うと、いずれも誤りだ。日本は絶対に破綻しない。これは紛れもない事実だ。

別の記事でも述べているが、基本的にメディアに登場する専門家は的外れなことしか言わない。そもそも専門家ですらないのに「専門家」という肩書だけのただの有名人もいる。その中でも特に、「経済学者」あるいは「エコノミスト」と呼ばれる集団は超ド級の痛々しい方たちだ。さも訳知り顔で180度間違った話を連発する。聞いてるこっちが恥ずかしくなる。

日本の財政破綻論は、そうしたもの知らぬ一般人を惑わす、もの知らぬ専門家集団によって吹聴された、明確な「デマ」なのである。

日本が財政破綻しない理由はいくつかある。しかし今回は、誰でもわかるもっとも単純明快で強力な根拠について述べていきたい。

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『破綻』の定義

 そもそも、「財政破綻」とはどういった状況に陥ることを指すのだろうか。もちろん、お金が返せなくなる状況をいうのだが、それを具体的に説明するとどういった状態なのだろうか。

これに答えられる人は意外と少ない。しかし、よくよく考えると、「破綻の意味」もろくに知らないのに、

「日本はもう破綻する!年金なんか絶対もらえない!日本〇ね!」

と被害妄想を膨らませるのはとても滑稽な話だ。挙句の果てに、ネットや書籍などでは、

「日本はすでに破綻状態にある」

とかわけのわからないことが書いてある記事も多い。恥ずかしいから今すぐやめた方がいい。

こうした人々の具体性のなさに漬け込むのがメディアであり専門家だ。何となく、モヤっと理解している物事には気を付けた方がいい。そこにこそ嘘が隠れている。

 「破綻」の定義は、端的に言えば「債務不履行(デフォルト)」のことを指す。

どこの国の国債でも、必ず償還期限(返済期限)が存在している。償還期日になれば、国債を保有する人(債権者)に額面通りの金額が支払われ、債務が解消(借金が消滅)する。こうして決まった期日に決まった金額が予定通りに支払われることを債務の履行といい、逆に支払いが滞ると債務不履行となる。なので、「お金が返せなくなる」だけではなく、「期日までに」返せなくなることも含め債務不履行と定義され、そのことをもって財政破綻と呼ぶ。

稀に、「日本はいつ借金を返済するのか」という論調をネットで見かけることがある。しかしご安心を。日本国政府は、毎年借金を返済し続けている。決まった期日に、決まった金額を債権者に支払い続けている。問題視されているのは、その国債の償還額(借金の返済額)以上に国債を発行し(借り入れ)ているため、借金の残高がモリモリと増え続けていることである。

最近よく耳にする「プライマリーバランス(基礎的財政収支)」というのも、毎年の借入額と返済額のどちらが大きいかで、実質的な収支の黒字・赤字を考え、借金の残高が増えているか減っているかを判断する概念だ。

ここで重要なのが、政府はお金を借り入れつつ、同時に借金を返済しているということである。つまり、実態としては、「借りた金で借金を返している」のである。正に自転車操業だ。

しかし、逆に考えれば、債務を償還するための資金を調達し続けることができれば、支払いが滞ることはなくなる。つまり、極端な話をすれば、どんなに借金を膨らましたとしても、貸し手が永久に存在し続ければ、永久に破綻することはないということになる(もちろん、普通はそんなことはあり得ない)。

そしてこの「借りて返す」というのを債務の「借り換え」といい、よく聞く「資金繰り」の考え方の基本になっている。どこの企業も事業主も、あるいはどこの国家も、この資金繰りを安定化させることが経営上最も重要なテーマとなる。だからこそ、銀行が金を貸してくれるかくれないかが重要になるのだ。

企業経営者も個人事業主も、銀行がお金を貸し続けてくれるかを常に気にしている。なぜなら、仮にプライマリーバランスが黒字でも、資金提供者がいなくなった途端に、返済資金が枯渇して債務不履行になる可能性が出てくる(借り換えができなくなる)からだ。なので単純な収支より、銀行の貸し出し意欲の方が経営者にとっては気がかりなはずだ。

したがって財政破綻とは、具体的には「お金が借りれなくなる状態」すなわち、お金の貸し手がいなくなる状況」をいうのである。そのことを指し、銀行などの貸し手側から見た場合には「信用がなくなる」という。

『負債』と『通貨』の歴史

 ここでもう一つ、根本的な話をする。ある人が「負債を抱えている」といった場合、何を借りて何を返さなければならない状態を指しているといえるだろうか。

もし借りているものがお金であった場合、当然、「お金を」返すことになるだろう。なのでその負債は「借金」と呼ばれる。ではお金とは具体的に何なのか。繰り返しになるが、こうした多くの人がモヤっと理解しているようなことが、一番の落とし穴なのだ。

例えば、現代の日本では、企業の従業員や公務員に対し、給与として支払われるのは「お金」である。そして所得税や法人税などの税も「お金」で徴収される。

 では江戸時代はどうであっただろうか。

当時の社会において公務員と呼べるのは武士だ。彼らに給与として支払われていたのは主に「お米」であった。そして農民に課される税も、年貢と呼ばれる「お米」だ。なので当時の日本ではコメやコメの保管証書が今のお金のような役割を果たしていた。

しかし、その「コメ」を指して「お金」と呼ぶことはあまりない。通常、そうした現代における「お金」のような役割を果たすものを、時代を通じた概念として「貨幣」と呼ぶ。

一方、当時の日本において貨幣であった「コメ」は、諸外国との交易では通用しなかった。その当時交易のあった清やオランダなどとは、もっぱら金や銀などの貴金属にて取引されていた。したがって国際的には「コメ」は貨幣ではないということになる。

このように、その国や地域においてのみ通用する貨幣を「通貨」と呼ぶ。なので当時のコメは日本国内においての通貨であり、このことを指して、江戸時代の日本は「米本位制」の経済であったといわれる。一方で、当時の欧米では金や金の引換券(金貨などの「本物の通貨との交換が保証されている紙幣」という意味で、これを「兌換紙幣」と呼ぶ)が通貨であり、そのような経済の仕組みを「金本位制」と呼ぶ。

ところが、この「米本位制」や「金本位制」は大きな問題を抱えていた。コメの収穫量が減少したり、貿易赤字などによって国外へと金が流出すると、通貨の量が減ってしまうのである。経済に流通する通貨の量が減れば、企業や事業主の収入、政府の税収は減少してしまう。その結果、それまで借り入れていた負債の返済が困難になってしまうのだ。

おまけに、大規模な戦争や自然災害など、緊急的な出費の必要に迫られた場合には、現代と同じように多額の借り入れをしてその通貨をねん出したのだが、最終的には国内の限られた通貨から税をかき集め、その負債を返済するしか方法がなかった。しかし、通貨量が限られているのでそれは事実上不可能である。その結果、江戸時代の諸藩は徳政令(現代でいうところの財政破綻宣言)を乱発し、信用を失い続け、高利貸ししか存在しない、超高金利の金融体制となっていたのである。

さらに、国内経済の通貨量が減少すると、通貨1単位当たり(今の日本でいうところの1円当たり)の希少価値が上昇してしまう。すると、その反対にモノやサービスの価値は通貨に対して下落する。結果、物価が下がり、デフレーションに陥る

これが近代以前の負債と通貨事情であった。しかし、近代以降、日本は大きな変革を迎えることになる。

『不換紙幣』と『西南戦争』

 明治時代に入ると、武士の社会が終わりを告げ、官吏(公務員)が登場する。それによってコメが給与として支払われることもなくなった。年貢も廃止され、農民に土地の私的所有を認める代わりに、所有する土地に課税される「地租」と呼ばれる税が導入されることになる。

これらの給与の支払いや税の徴収が当時何で行われていたのかというと、主に政府が発行する「不換紙幣」であった。不換紙幣とは、その名の通り、金やコメなどとの交換が保証されていない紙幣のことで、納税や給与の支払いなどに利用できるというだけでその価値を保つ通貨である(この仕組みを「管理通貨制度」と呼ぶ)。要するに、政府が好きなだけ発行できる、ただの紙きれである。

この紙きれを通貨としたおかげで、明治政府はいそいそと殖産興業政策に励むことが可能になった。何せ、通貨は事実上無限にある。いくらかの租税収入と、不換紙幣という名の打ち出の小づちを元手に、富岡製糸場などの「官営模範工場」と呼ばれる工場を次々と整備していった。

ところが、1877年、大きな転機が訪れる。特権を失った士族による大反乱、西南戦争の勃発だ。

日本史上最後の内戦であるこの戦いは、相手が士族ということもあってかその被害が甚大で、明治政府は大打撃を受けることになる。そしてその戦費は莫大なものとなったのだ。当時はただの紙きれを好きなだけ発行して財政赤字を賄っていただけなので、巨額の軍事支出によって国内の通貨量は飛躍的に増加した。

その結果、1円当たりの通貨価値は下がり、逆に通貨に対するモノやサービスの価値は上昇した。つまり、インフレーションの発生である。14.6%という、相当なインフレだった。

実はそれまでは、不換紙幣を好き放題発行し通貨量を増やしても、国内のモノやサービスの生産量や流通量の増加(実はこれを経済成長という)も著しかったため、それほどインフレは激しくはならなかった。しかし、あまりにも西南戦争のインパクトが大きかったせいで、明治政府は完全にやり過ぎてしまったのだ。

そして明治政府は、このインフレを退治すべく、次なる一手を打つことになる。

『国債』と『中央銀行』

 まず、政府は、増えすぎた不換紙幣を回収すべく、緊縮財政を実施する。増税をし、政府支出を切り詰め、財政黒字を確保することにより、政府の国庫に不換紙幣を吸収したのだ。さらに、官営工場の払い下げ(民営化)を実施し、さらなるモノの生産量増大を図った。その結果、みるみるうちにインフレーションは収まっていき、通貨価値は安定し始めた。

そしてさらに、日本銀行(中央銀行)を設立し、近代的な金融制度を目指すことになる。

これは、それまで、政府が直接通貨を発行し財政赤字に充てていた体制から、政府は国債を発行することによって調達した通貨を財政赤字に充て、逆に日本銀行は国債を買い入れることで通貨を供給するという体制に改めた。そしてこれが今にも続く中央銀行制度である。

これによって、政府の財政赤字が直接インフレーションになって跳ね返ることが阻止されるとともに、日本銀行はインフレーションが発生した場合には、保有する国債を市場に売却することによって、増えすぎた通貨を吸収して物価を安定させることが可能になった。

つまり、管理通貨制度と中央銀行制度の組み合わせにおいて、国債とは、実は政府にとっては負債ではなく、通貨発行の仕組みの一つであり、中央銀行と政府を媒介することによって物価を安定させる調整弁として活用されるものであるといえる

ではなぜ、ただの調整弁である国債に、わざわざ借金みたく利息や償還期限が設けられているのか。それは、日本銀行が過度なインフレを抑制するために国債を売却する際、利息と元本の返済がなければ誰も応札しないからだ。当たり前だが、無利子無償還の国債など、買ったら買った分損をするだけなので誰も買わない。しかし、買ってもらわなければ日本銀行は通貨を吸収できないため、インフレを抑制できない。なので、市場から通貨を吸収するために、利息と元本の償還という特典を付けて国債を発行、流通させているのだ。そして国債の償還期日がやって来たら、また新たに国債を発行し債務の借り換え(借りて返す)をしてしまえばいい。

もし、百歩譲って「国債は政府にとっての負債」と定義したとしても、政府には中央銀行(日本銀行)という永久の資金提供者が存在することになり、財政破綻はあり得ないということになるだろう。そもそも、政府が返済するのは、我々にとっては大切なお金だとしても、政府にとってはただの紙きれである。金の裏打ちもコメの裏打ちもない、自分たちが法令で定めたただの概念であり、政府が任命する日本銀行の首脳陣たちが、恣意的に好きなだけ増やすことができる人工的な数字の羅列だ。そんなもので破綻する方が不自然である。

しかし一方、ここで疑問に感じた方もいるのではないだろうか。世界には財政破綻を経験した国が確かに存在している。さらに現在でも財政赤字に苦しむ国が多いのも事実だ。ではそれらの国々と今の日本とでは何が異なるのだろうか。

実は、かつての大日本帝国も、それらの国々と同様、財政破綻の危機に陥った経験があるのだ。一体どういうことなのか、それはその後の明治政府の歩みを見るとわかりやすい。

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富国強兵と金本位政策

 明治政府はその後、円の国際的な通貨価値(外国為替レート)の引き上げと、貿易黒字の確保に邁進することになる。なぜかというと、その当時の日本円では、貿易で何も買えなかったからだ。

明治維新の最大の目的は、独立国家としての「日本」を維持することだ。しかし、当時の世界は、軍事力がものをいう植民地競争の時代だ。近代的な軍備が整っていない維新直後の日本は、とにかく早く軍事力を強化する必要に迫られていた。しかし、そのためには、近代的な兵器を装備する必要がある。

ところが、当時の日本国内にはそれらを生産する技術もノウハウもない。自力では欧米列強とまともに立ち向かえるような近代兵器を生産できなかったのだ。なのでそれらの調達は輸入に頼らざるを得なかった。しかし、輸入するにしても、日本国内でしか通用しない不換紙幣を渡すだけでは誰も兵器を売ってくれるはずがない

そこでまず、明治政府は当時欧米で国際通貨として流通していた「金」に目を付け、円の金本位政策を打ち出すことになる。つまり、金と円との兌換比率を定め、保有する金の量に応じた量の円だけを発行することにより、円の価値を金の裏打ちがあるもの(兌換紙幣)としたのだ。そうして国際的な円への信認を取り付けることにより、円で兵器などの輸入を可能にしようとした。

また、当時の世界で最も信用が高く、貿易の決済にも用いられていた通貨は、イギリスのポンドであった(当時のイギリスも金本位制)なので、貿易黒字を稼ぐことにより、それらの金やポンド(「外国の通貨」という意味で「外貨」という)を確保し、兵器輸入の原資にしようと画策したのである。これがいわゆる富国強兵政策であり、殖産興業を強力に推進した根拠であった。

1894年に始まった日清戦争で日本は勝利し、賠償金として多額の金を手に入れた。その金を元手に、政府は円と金の兌換を保証し、本格的な金本位政策を実施することに成功する。ところが、無理矢理金の保有量に通貨発行量を合わせようとしたため、国内は通貨不足に陥り、今度はデフレーションに見舞われてゆく。

一方、貿易面では、殖産興業政策によって成長した生糸や絹産業などの輸出量が増加し続けていた。そして、国内のデフレ政策が人々の消費需要を減退させ、輸入の過度な増加を抑制したことも相まって、貿易収支の黒字が定着、着々と外貨を獲得をしていった。

しかし、それらの努力もむなしく、日本は苦難の道を強いられる。

日露戦争と財政危機

 1904年、日本は満州と朝鮮半島の権益をめぐってロシア帝国と対立、日露戦争が勃発する。当時の日本にとって、朝鮮半島は緩衝地帯(本土決戦を避けるための最終防衛線)という位置づけであったため、朝鮮半島支配が揺らぐことは絶対に容認できなかった。

しかし、相手は大国ロシアである。近代兵器なしに戦って勝つことなど到底不可能だ。また戦うための兵器調達も膨大なものになると予想された。そしてその予算は今までに経験したことのない巨額赤字をもたらすことは明白だった。着々と外貨を獲得していたものの、ロシアと戦うための兵器をそろえるには、全く足りていなかったのだ。

そこで政府は、国債を発行してその資金調達を行った。もちろん、不換紙幣を日本銀行に発行させ、国内で日本円を調達しても、円の価値がその分下がるだけなので全く意味がない。ではどうしたか。

実はその際、国債をポンドで売り、ポンドを借り入れることによって外貨を調達しようと考えたのだ。その額、およそ1億3000万ポンド(当時の日本円で約13億円で、国家予算のおよそ6倍)である。その結果、政府は軍備増強のための莫大な軍資金を手に入れ、決戦に備えたのだ。

このように、外国の通貨で発行する負債を「外貨債」(特に国債の場合は「外貨建て国債」)と呼ぶ。現在でも、自国通貨の信用が低く(為替レートが低く)、かつ必要な物資や資本を国内で生産できない途上国などは、外貨債を発行し、外貨を調達して何とかやりくりしている。そして当時の日本もまた、現在の途上国と同じように、外貨債を発行せざるを得ないほど生産力が弱かったのだ。

しかしこの外貨債、大きな問題を抱えている。当たり前だが、日本銀行はポンドを発行できない。外貨は貿易黒字を稼ぐか、自国通貨の通貨高政策(当時の日本は金本位政策)を採用して外貨と両替してゆく以外に、増やす方法がない。つまり、返さなければならない通貨が、国内の不換紙幣のような単なる紙きれではなくなってしまうということだ。なので返済が極めて困難な国債といえるだろう。いうなれば、管理通貨制度(不換紙幣)を採用する国家にとって唯一の「負債」といえるのが、この外貨債なのである。

この莫大な額の外貨債を抱えた日本政府は、その後、財政破綻の瀬戸際に立たされ続けることになる。

ところが、1914年、第一次世界大戦が勃発すると状況は一変する。

戦場となった欧州では多くの生産拠点が破壊され、さらに戦争による物資の需要増大も相まって、日本から欧州への輸出が激増した。それにより日本は莫大な貿易黒字を積み上げることに成功する。さらに、それらの戦争特需による重化学工業の発展によって、国内の生産能力が飛躍的に向上、財政破綻危機を何とか回避したのだった。

かつて財政破綻した国々

 世界では、現代でも財政破綻に陥る国家は多数存在する。第二次世界大戦以降も、アルゼンチン、ロシアなどが破綻の憂き目にあっている。最近ではギリシャが破綻した。

ではそれらの国々の共通点は何なのか。それはたった一つだけだ。

「外貨債を大量に発行していた」のである。

ロシアもアルゼンチンも、大量にドルで国債を発行し、借り入れたドルで自国通貨を買って為替の安定を図っていた。しかし当然、それらは自国の中央銀行が発行できない通貨の負債であり、それらの負債に信用不安を起こした投資家の売り浴びせが発生すると、為替レートが暴落し、外貨債は返済不能になる。

結局、アルゼンチンは通貨暴落により外貨債そのものの債務不履行を起こす。一方のロシアは、自国通貨(ルーブル)の売り浴びせに対抗、投資家が保有していた償還期限の迫ったルーブル建ての国債(ルーブルで返済する負債)をあえてデフォルトさせ、投資家のルーブル資産を取引不能に追い込むことで、ルーブル売りを強引に阻止しようとした。発想が完全にヤ〇ザだ。

また、ギリシャが2015年に破綻したのは、通貨がユーロであったためだ。ユーロは各国間にまたがる共通通貨と言われるもので、そもそもギリシャには自国通貨そのものが存在しない。なのでギリシャ政府はユーロを自由に発行できない。つまり、現在のギリシャ政府が発行する国債は、100%外貨債だといえる。そんな中で貿易赤字と財政赤字を垂れ流し続けたため、投資家の信用不安を招き破綻した。

ちなみに、ギリシャは2010年の財政危機から5年ほど粘った末に破綻したのだが、破綻時(IMFへの支払延滞時)は決死の緊縮財政(社会保障費の削減、公務員の削減、増税など)によってプライマリーバランスは黒字だった。しかし、国債購入者がいなかった(資金提供者がいなくなった)ため破綻した。つまり、破綻するかどうかとプライマリーバランスは無関係の場合がありうるということになる。あくまで重要なのは、資金提供者が存在するかしないかだ。そう考えると、国債を無限に購入できる中央銀行の存在意義は絶大だ。

あるいは、かつての江戸幕府や藩、世界の中世・古代における破綻国家の共通点は、江戸時代の章でも説明したように、通貨が「不換紙幣(紙きれ)じゃなかった」ために起きた破綻だったといえるだろう。これらをまとめると、

①外貨債を発行していること

②不換紙幣でない通貨を用いていること

この2点のいずれかに該当すると、財政破綻のリスクが生じるということになる。裏を返せば、この2点のいずれにも該当しない国家は絶対に破綻し得ないということだ。少なくとも、この2点に該当しない状態で財政破綻した国は、人類史上一つもない

現在の日本国政府

では現在の日本国政府はどうか。

当然、現在の日本円は不換紙幣である。そして現在の日本国政府の債務は100%「円」で借り入れ「円」で返済する借金である。外貨債は無い

これを言うと、よく「日本の国債は90%が日本人が保有していて、10%が外国人と聞いたのだが」と勘違いされる方が多いのだが、それとこれとは別の話だ。私が述べているのは「誰が保有しているのか」ではなく「何の通貨で借りて何の通貨で返すのか」の話だ。彼らの言う「10%の外国人」もまた円で国債を購入し、円で償還される前提で保有している。事実として、日本国政府には、円で借りて円で返す借金しか存在しておらず、外貨債を抱えていない。なので、破綻はあり得ない。

よくよく考えれば、これは単純な話である。要は、

どうして政府はお金をつくれるのに、お金が足りなくなって破綻することがあり得るのか?

という意味なのだ。そしてこの問いに答えられる人間はいない。なぜなら答えは「破綻しない」からだ。唯一反論があるとすれば、

「むやみに国債と通貨を発行すれば、インフレになってしまう!」

という主張だろう。しかし、とっくの昔から日本国政府は年間十兆円以上の財政赤字を垂れ流し続け、日本銀行は何百兆円もの国債を買い入れ、通貨を発行し続けている。それにもかかわらず、現在の日本はデフレーションだそしてそれに20年も悩まされ続けている。おまけに国債の金利は世界最低水準で、1980年代以降は慢性的な円高にも悩まされている。

もし国債と通貨の発行が過剰ならば、金利は上昇し、為替レートは暴落し、そして物価は上がり続け、インフレーションによって経済が混乱するはずだ。ところが、日本経済はそれらとは真逆の現象によって、20年もの間、停滞を続けているのである。

したがって、日本は財政赤字が足りていないという結論に至るのだ。

それでもどうしても納得できない人もいるだろう。何せ政府累積債務はGDP比較で230%を超えている。こんな国は日本以外に存在しない。どう考えたって債務残高が多すぎると感じるのも無理はないように思う。

しかし、それは政府が放漫財政をしているからでも、社会保障費が増えすぎているからでもない。ましてや「日本経済の国際競争力が」云々とかいう話は全く関係ない。財政赤字の拡大と、政府累積債務の増大の真の原因は別にある

その点については次回、解説していきたい。

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