北朝鮮核・ミサイル問題の真実(その1) ~メディアに惑わされ続ける日本~

北朝鮮の真実

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 2017年6月8日、北朝鮮は今年に入り10回目となるミサイル発射実験を実施した。

そして朝鮮中央通信は次のように警告を発した。

 日米同盟の堅持を重視する日本の姿勢にも、「腹黒い下心の発露である」といい、続けた。
「そんなにも安保が不安であるなら、米国のむく犬になって奔走するのではなく、反共和国敵視政策を撤回し、米国の侵略的な軍事基地を日本の島々からすべて追い出せばよいであろう」
「現在のように、日本がわれわれの拳骨の近くで意地悪く振る舞っていれば、いったん有事の際、米国より先に日本列島が丸ごと焦土化されかねないということを認識すべきである」

引用:『北朝鮮が不気味予告「日本列島が焦土化」4週連続10回目のミサイル発射は「6回目の核実験」の兆候か』,「zakzak by夕刊フジ」,産経デジタル, 2017年7月20日アクセス

この文章を見て、何を感じただろうか。

「こんな恫喝に屈するな」とか、

「戦争の危険性が増してきた」とか、

「金正恩は頭がおかしい」とか、それぞれ感じるところはあるだろう。

私も、「金正恩は頭がおかしい」

というのはよく理解できる。

いや、頭の中じゃなくて、髪型が。黒電話が乗っちゃってる。

しかし、解せない部分もないだろうか?

やたら出てくる「米国」というフレーズだ。

なぜここまで北朝鮮はアメリカに対して敵意むき出しなのだろうか。

少なくとも、

「毎晩喜び組でチョメチョメしてる痛風持ちのド変態、暗黒の黒電話こと金正恩が、核ミサイルという狂気のおもちゃで遊び始める中、正義のためにその首を討ちとるべく立ち上がったのは、愛と勇気だけが友達の(殺る気)満々マンことUSA!!!」

とかいうそんな単純な構図ではないはずだ。

いや、ちょっと総書記に対しては言いすぎたかもしれない。ただ多くの人が、そんなに単純ではないはずだと思いながらも、なぜこのような事態に陥っているのかについてきちんとした理解を持っていないように感じられる。

その一方で、マスメディアの取材を受ける、いわゆる「専門家」の見解も、当たり障りのない表面的な話だけでどうも腑に落ちない。

したがって、何故北朝鮮がアメリカをここまで敵対視するのかを、北朝鮮の立場に立って考えていきたい。

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日本のマスメディアの稚拙な分析

 まず、上記の恫喝に対する専門家の見解とやらを紹介したい。引用元は同じだ。

 評論家で軍事ジャーナリストの潮匡人氏は「日本海での日米共同訓練に対する反発に加え、日米同盟を分断させるため、日米関係を牽制する目的がある」と断言。朝鮮中央通信で使われた日本列島の「焦土化」という表現について、次のように分析する。
 「在日米軍基地だけでなく、日本の都市部も攻撃対象であるという意味ではないか。そう脅すことによって、日本国内で『対米追従反対』『憲法9条改正反対』を唱える勢力を伸長させようという狙いも考えられる」

引用:前掲

なんか本の内容を説明しただけの小学生の読書感想文みたいだ。

わかりやすくすると、この取材のやり取りはこんな感じだ。

記者「北朝鮮はこういってますが、つまりこれはどういうことですか?」

潮氏「いや、そういうことですよ」

これじゃあ取材の意味がないだろ、黒電話の話聞いてないのかよ。

さらにもう一点突っ込ませていただくと、

「『憲法9条改正反対』を唱える勢力を伸長させようという狙いも考えられる」

とあるが、これはどう考えても逆だ。

日本が米軍の協力無しで現状と同等の防衛力を維持しようとすれば、自衛隊を増強させる必要が出てくるはずだ。そうなれば、9条改正の必要性も高まる。

むしろ北朝鮮のこうした恫喝が改憲勢力を勢いづかせているといった見方も可能なはずだ。

少なくとも、北朝鮮が上記の恫喝で言わんとしていることは、次の2点だけである。

アメリカと手を切れ

ウチに余計な口出しすんな

日本がアメリカと手を切ったとして、その後9条を改正しようがしまいが北朝鮮はおそらくそれには関心がない。むしろ、9条改正が日本のアメリカ依存脱却を後押しするのであれば、北朝鮮はそれを歓迎するだろう。

したがって、北朝鮮の仮想敵はあくまでアメリカであり、(本来は)日本など眼中にないと捉えるべきだろう。

北朝鮮「お金が欲しいだけ」説

 さすがに最近ではトーンダウンしたが、マスメディアやそれに登場する専門家が盛んに主張していた説がある。それは、北朝鮮がミサイルを発射するのは、アメリカにアピールをすることで、アメリカから資金援助や経済制裁の解除などを引き出そうと企んでいるだけなのだという見解だ。

つまり、

「アメリカさん、アメリカさん、お話ししましょ♪」

とアポ取りながら、

テポドーーーン!

とか言ってミサイルをぶっ放しているという説だ。

ツンデレとかいうレベルではない。

さすがに現在では、北朝鮮が経済制裁をものともせずにミサイルを打ちまくり、その性能を向上させているせいで、

「どうも本気でミサイル開発をしているな」

「核兵器まで本気でやりだしたぞ、これはまずい・・・」

と考えるようになったのか、大々的にこの説を唱える場面は少なくなった。

しかし近年まで、メディアに登場する専門家の見解と言えばこれが定番であった。というより、これしか言っていなかった。

裏を返せば、北朝鮮がその本気度を見せつけることで、こうした日本の専門家の見解は誤りだったということを証明しつつあるということである。

このように、日本のマスメディアやお偉い先生たちの論点はいつも的を外している。相手の腹の内を探ろうとするのは大変結構だが、穿った見方をし過ぎて議論が明後日の方向へ羽ばたいている。

「専門家」と言えども、この程度の分析しかできないのが現実だ。

北朝鮮のミサイルが問題視される理由

 そもそも北朝鮮のミサイル発射が危険視されるのはなぜだろう。よくよく考えれば、日本にとっての脅威は無数に存在するのだ。

領土問題を抱えるロシアと韓国はもちろん、海洋進出著しい中国、どさくさに紛れて尖閣諸島の領有を主張する台湾、カンガルーには厳しいが、クジラにはやたらとやさしいオーストラリア・・・。

さらにそれらの国々は皆強力な軍隊を保持している。当然ミサイルもだ。

そしてミサイル発射を行っているのは北朝鮮だけではない。

米:アメリカが、2015年に世界で数万発のミサイルや爆弾を発射 Pars Today 2016年3月6日

露:ロシア、史上最強の核ミサイル「サタン2」の発射試験を実施 Businessnewsline

中:中国 新型ミサイル発射実験に成功 sputnik 日本 2017年5月10日

印:インドが長距離ミサイル「アグニ5」の発射実験に成功 AFP BB News 2012年4月19日

台:台湾がミサイル発射訓練、失敗目立つ結果に AFP BB News 2011年1月18日

このように挙げればきりがない。

要するに、ミサイルなど世界中打ちまくっているわけである。もちろん、だから北朝鮮のミサイルも大丈夫だというつもりもない。むしろ、どこの国も本当は脅威なのである。

これらの国々がミサイル発射実験・訓練を繰り返すのは、世界的な軍事技術の向上に置いていかれないよう、その技術を磨き続ける必要があるためだ。特に、それぞれの仮想敵国に対し、技術的な遅れをとることは軍事上致命的なものとなりかねない。

当の北朝鮮もそうした理由からミサイル実験を繰り返していると考えるのが妥当だろう。

また、北朝鮮の仮想敵国はアメリカと韓国である。特にアメリカは核保有国であるから、北朝鮮も核保有国となるべく核実験を行っているだけだとすれば、我々日本人にとっては恐ろしい話ではあるが、理屈としては筋が通るのである。

また、お気づきかもしれないが、上記記事のリンクはいずれも海外メディアの日本語版である。日本のメディアでは北朝鮮ミサイル発射のニュースはしつこいほど報道するが、他の国については報道しないか、したとしても軽く触れる程度だ。

もし他国のミサイル発射や核実験が北朝鮮のニュースと同様に報じられていれば、北朝鮮「だけ」が喫緊の脅威であるかのような感覚にとらわれることはあるまい。

つまり、これほどまでに北朝鮮のミサイル発射が問題視されるのは、どうもマスメディアのバイアスによるところが大きいようである。

いずれにしても、このように、北朝鮮のミサイルが日本に飛んでくる危険性は十分にあることは間違いない(その点については追々明らかににする)のだが、本当の問題と世間が漠然と抱く懸念とはだいぶズレがあるのである。

 日本VS北朝鮮?

 よく、

「北朝鮮とアメリカが戦争することになれば、日本にミサイルが飛んでくる」

といった主張を見かける。

おそらくそれは正しいし、北朝鮮は明確にそうするぞと警告を発している。では、もしこの構図の中に「アメリカ」が存在していなかったとすればどうであろうか。

よくニュースでは、韓国とアメリカに対する北朝鮮の強硬な態度を報じている。

しかし、つぶさにニュースを見る人なら薄々気づいているかもしれないが、直接日本に対して、北朝鮮が批判や強硬姿勢を表したとする報道はごく稀である。あるとすれば、上記記事のようにアメリカがらみのものがほとんどだ。

もしくは次のようなものが挙げられる。

朝鮮中央通信は13日、日本のアダルトビデオ(AV)出演強要問題などに関する論評を配信し、「日本こそ最も非人間的な社会、腐って病んだ社会だということを(強要問題が)余すところなく実証している」と非難した。
(中略)
さらに、「あらゆる社会悪がまん延する日本で、毎年2万編の各種色情編集物(映像作品)が製作されて人々の健全な思想意識をまひさせ、腐敗堕落の道へと容赦なく後押しする一種の『麻薬』として、犯罪集団のための金もうけの手段として利用されている」「特に色情映画産業が繁盛して同国の多くの女性と子供がそのいけにえへと転落している」などと指摘した。

引用:『北朝鮮が出演強要を非難「腐って病んだ社会」』,毎日新聞社,2017年7月22日 アクセス

「喜び組を棚に上げて何言ってんだよ、頭に直接イタ電すんぞ」

と思った方もいるかもしれない。

ただ、自国のことを棚に上げている点はさておき、この批評そのものに「胸を張って」反論することはできないのではないか。ある種日本人の(特に野郎共の)ちょっと恥ずかしい痛い部分を突かれてしまった感はある。

その点、あの勇ましいチマチョゴリおばちゃんに糾弾されても文句は言えない。少なくとも、北朝鮮の報道の中ではかなりまともな方である。

もちろん、この論評は北朝鮮の社会主義体制の正当性を示すため、自由主義国である日本を取り上げて蔑むものである。つまり、これは北朝鮮国内向けの論評なのである。北朝鮮の現政権の正当性を主張するために、日本が題材となったというだけだ。

裏を返せば、北朝鮮にとって日本とはその程度の扱いしかしていない(本来は)どうでもいい国だということを指し示しているのではないだろうか。

これらを踏まえると、北朝鮮と日本が軍事的に直接対峙するという構図はどうも考えにくい。あくまで日本と北朝鮮の対立構造は「アメリカ」という存在を介して成立しているという観点が必要だろう。

そうした観点に立てば、我々がその動向を注視すべきなのは北朝鮮ではなくアメリカということになる。先ほど述べたように、ミサイル発射などどこの国もやっているし、核弾道ミサイル技術など、とうの昔に中国やらロシアやらが完成させている。

北朝鮮が日本にとって脅威でないというつもりは一切ない。むしろとんでもない脅威である。しかし、日本のマスメディアはあまりにもピントがずれているために、本来はどうでもいい北朝鮮のミサイル実験を、何とかの一つ覚えに毎日毎日報道する一方、

『アメリカ政府の腹の内』

は探ろうとはしない。

要するに、注目すべきはそこじゃないということである。

いずれせよ、アメリカが北朝鮮から見てどんな国なのかという点について考える必要がありそうだ。

そこで次回(その2)は、北朝鮮から見た、アメリカの実像について考えることにしたい。

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