北朝鮮核・ミサイル問題の真実(その5)~海をめぐる日米中露の攻防~

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 最近、面白いニュースがあった。

 フィリピンのドゥテルテ大統領が北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長を「馬鹿(fool)」「「犬XX(son of bitch)」と強く批判した。 

  2日のロイター通信などによると、ドゥテルテ大統領はこの日、全国に放送されたテレビ演説で「金正恩は危険なおもちゃを持って遊んでいる馬鹿だ」と述べた。続いて「あの太った顔は親切に見える。彼は犬XXだ」とし「もし彼が失敗を犯せば東アジアは不毛地になるだろう。この核戦争を止めなければいけない」と北朝鮮の核挑発を強く批判した。 

引用:『ドゥテルテ比大統領「金正恩は…」』,ⓒ 中央日報/中央日報日本語版,2017年8月12日アクセス

日本のメディアはこの発言に

「おっ、これおもしれぇ」

と思ったらしい。割とこのニュースは各所で取り上げられていた。

なぜこれほど取り上げられたのかは定かではないが、おおよそ見当がつく。粗暴な発言と非情な麻薬撲滅作戦で話題となっている、いろんな意味でラフなあのおっちゃんですら、黒電話を狂人扱いしたからだろう。ちょめちょめマークが多いからというのもあるかもしれない。

そしてこのニュースを見て、国際政治の場で、狂人達が罵り合う見世物を観覧しているかのような感覚に陥った方も多いのではないか。

しかし、これは見世物としてとらえるべきではない。

いや、別に、

「私たちに関係ないことではないから面白がるのはよくない」

とか、そんな説教じみた話をしたいわけではない。

一国の首脳たる人物が、意味もなく他国を称賛したり、非難したり、ましてや敵対関係や友好関係を策したりするなどあり得ないという意味だ。

前回からの繰り返しになるが、あくまで国家は合理的に行動する。このラフなおっちゃんも例外ではない。

ではなぜ、このラフなおっちゃんは、いきなり金正恩を非難し出したのだろうか。それは、前回のラフな前フリにあった、金正恩政権滅亡後の問題と関係している。

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『第1列島線』

 フィリピンは今とてつもない脅威に直面している。フィリピンが領有するスプラトリー諸島(南沙諸島)の海域の領有権を、中国が主張しているのだ。

しかも中国は、その島々(岩)の暗礁を埋め立て、人工の島まで建設している。その上、その人工島を軍事基地として活用しようとする動きすらあるというのだから、おっちゃんも笑えない。

こうした中国の動きは、対フィリピンだけではない。

インドネシア、ベトナム、ブルネイなど、東南アジア諸国に対し強硬な姿勢で島々の実効支配を成し遂げようとしている。ベトナムに至っては、1974年の西沙諸島の戦い、1988年のスプラトリー諸島海戦で中国海軍に敗れ、実際に島を奪われた。

現在、東南アジア諸国はこのような南シナ海での中国海軍の動きに、神経をとがらせている。

対する中国は、「第1列島線」と称し、南シナ海からその北東の東シナ海の大部分をぐるりと囲むように境界線を引き、その内側を手中に収めようと画策してきた。そして着々と実現させようとしている。日本が神経をとがらせる尖閣諸島も、この第一列島線の「西側」に位置している。

しかも、「第1列島線」という名称が示す通り、もっとエグい「第2列島線」という構想もある。しかし、現状では実現性が乏しい(中国政府がどう考えているかは知らない)ため、焦眉の問題は、とりあえずは第1列島線だろう。

第1列島線と第2列島線

画像:© 2015 The Sasakawa Peace Foundation,(作成者:倉持一)

中国のこのようなジャイアニズムの背景には、中国特有の事情がある。

実は中国には、「海がない」のだ。

「ない」と言っては言い過ぎかもしれないが、その膨大な人口と広大な陸地に比べると、「ない」といっても過言ではないほど、狭いのである。

「それが何か問題なのか?」

と思われるかもしれないが、「中国にとっては」大問題なのだ。

ぱっと思いつくのは、人口に比例した海産物(食料)の確保だとか、海底に眠る資源だとかの経済的な権益だろう。もちろんそれも中国が重要視していることは間違いないのだが、実は軍事的な意味合いもあるのだ。

現代の戦争において最も強力な軍備と言えば、もちろん、核兵器である。特に核弾頭を乗せたICBM(大陸間弾道ミサイル)が最強の兵器だ。そしてそれは既に中国も保有している。

しかし、世界中に軍事基地を展開しているアメリカと対峙するには、それだけだと、

「必要条件」を満たせていても、

「十分条件」は満たせていないような状態なのだ。

その4で説明したように、核保有の動機は「核抑止力」である。

その核抑止力を成り立たせるためには、「相互確証破壊」を実現させる体制を構築する必要があると述べた。

しかし、現在の北朝鮮がそうであるように、アメリカ本土に到達する核弾頭ミサイルを保有するだけでは、ミサイル発射基地が無力化された場合、相互確証破壊の要件を満たせなくなる恐れがある。もちろん、核ミサイルを持つだけでも十分である可能性はある。

しかし、今後米軍から執拗なマークを受け続けるであろう中国軍としては、アメリカに対抗しうる大国となるべく、相互確証破壊の万全な態勢を整えたいという思惑があるのだ。

そこで重視されるのが「潜水艦」だ。

陸上のミサイル発射基地ではなく、海の中から隠密にミサイルを発射する体制を構築することにより、ミサイル発射能力の無力化を回避できるのだ。

ところが、そういった体制を構築するには広くて深い海が必要である。しかも、常時自国の海軍だけが排他的に活動できる海でなければならない。そうでなければ、隠密性が失われてしまう。

このような理由から、アメリカと真正面から対立してきたロシアは、日本海の北東に位置するオホーツク海や、ノルウェーの北に位置するバレンツ海にそうした海を保有し、核弾頭ミサイルを艦載した潜水艦を、常時沈めていると考えられている。

こうした海を、軍事用語で「聖域」と呼ぶ。

したがって現代の戦争において最強と呼ばれる戦力は、理論上永久に潜水できる「原子力潜水艦」と、そこに艦載される「核弾頭ICBM」、そして「聖域」の3点セットといえるだろう。

しかし、中国にはその「聖域」がない。

一応、中国にも「渤海」と呼ばれる小さな海はあるのだが、聖域として活用するにはあまりにも汚い狭い海であるため、「十分条件」は満たしきれない。そのため、中国はより広くて深い聖域を求め、第1列島線の実現にいそしんでいると考えられる。そして海を獲得した暁には、もれなく海洋資源がついてくる。

中国は今、「海」を渇望しているのだ。

ところが、そうした中国の動きに、待ったをかける国が現れた。

『アジア・ピボット戦略』

 2011年11月、オーストラリアの議会で、外遊中のオバマ大統領(当時)が、世界へ向け演説を行った。その中で彼は、中東に置いてきた米軍戦力の重点を、今後東アジアに移すと宣言した。

この宣言から始まったアメリカの戦略は「アジアへの回帰」という意味で、「アジア・ピボット戦略」と呼ばれる。

これが中国の「第1列島線」に対抗する意味もあることは容易に想像がつく。

最大の目的は、「航行の自由作戦」と称して行われている、世界的に重要な航路を確保する軍事活動を強化するためだ。特に南シナ海は、世界の貿易量の3分の1を占めるといわれるほど重要な航路であるため、アメリカのみならず世界中の国々(特に日本)がこの航路を中国の支配下に置かれたくないと考えている。

あるいは、そもそも、中国の「聖域」確保を阻止するという目的も、この当時のアメリカには、ないわけではなかっただろう。

こうしたアメリカの戦略の変化が、中国の第1列島線構想の実現に暗い影を落とした。

中国が今まで南シナ海で対立していたのは東南アジア諸国の艦船だった。軍事力の差は歴然で、ベトナムは歯が立たずに撤退するほかなかった。

しかし、アメリカの「アジア・ピボット戦略」以降は、米軍の原子力空母が顔を出すまでになってしまった。

さすがの中国も、世界のジャイアンが出てきてしまっては、強引に海洋進出を続けることは不可能だ。

東シナ海においても、日本の尖閣諸島国有化など、思うように事が進まなくなってきている。

在日米軍のおよそ7割が集結しているとされる沖縄でも、中国の思惑通りにはいかなかった。あれだけ大騒ぎしていた米軍基地移設問題には、おそらく中国も期待をしていたに違いない。しかし、結局、計画通りに進む運びとなった。そして日本の海上自衛隊は、徐々に東シナ海に戦力を重点化させており、奇襲で尖閣諸島などを奪い取ることは一層難しくなったといえる。

南シナ海、東シナ海ともに、これでは聖域確保ができなくなってしまう・・・。

そうした状況の中で、北朝鮮で、張成沢の処刑が、2013年12月に行われた。

この事件が、北朝鮮に対するアメリカの強硬手段をもたらしうる契機となったことは、すでにその4で述べた。

そして第1列島線は、北朝鮮という存在を介し、新たなターゲットに的を絞りつつある。

ずばり、日本海だ。

狙われる日本海

 地図で見るとわかりやすいが、中国は、北朝鮮とロシアに阻まれるかのように、ギリギリ日本海には面していない。中国海軍が日本海へ顔を出すためには、朝鮮半島西側の黄海から九州と韓国の間の対馬海峡を通らねばならない。

したがって日本海の聖域化は現状不可能だ。

ところが、もしその4で述べた展開通りに、北朝鮮が完全な中国の属国と化し、北朝鮮国内に中国軍基地が置かれた場合、中国は広い日本海へ直接アクセスできることになってしまう。

それは、現在、石垣島の島民が恐怖に慄いているのと同じ状況が、日本の本州日本海側沿岸で起こりうるということを意味する。

したがって、日本にとって金正恩政権の滅亡は、全然望ましいことじゃないのだ。

そして、こうした中国の思惑を警戒するもう一つの国が、日本に歩み寄りを見せ始めた。同じく日本海に面するロシアだ。

 中国が日本海-オホーツク海-北極海を経て大西洋に抜ける北極海航路への進出を強める中、日露両政府が、海上自衛隊と露海軍の連携強化に向け、動き出した。12月15日に山口県長門市で予定される安倍晋三首相とプーチン露大統領との首脳会談でも極東の防衛協力はテーマの一つになる見通し。
(中略)
ロシアにとってオホーツク海は戦略原潜を展開する「聖域」だけに中国の動きに神経をとがらせている。11年と14年には、雪龍の航路上でミサイル演習を行い威嚇した。昨年12月に策定したロシアの国家安全保障戦略では、極東と北極圏をつなぐ沿岸防衛システムを構築する方針を決定した。千島列島と北方領土への地対艦ミサイル配備も対中牽制(けんせい)の意味合いがある。

引用:『海自と露軍、連携強化へ 中国の北極海航路進出を牽制』,「産経ニュース」,産経デジタル,2017年8月14日アクセス

ロシアは、日本海沿岸に拠点を構えるロシア海軍(太平洋艦隊)が、中国海軍に脅かされるのではないかといった懸念をすでに抱いている。

太平洋艦隊の主要な任務は、ロシアの聖域「オホーツク海」を守り、アメリカに対抗する核戦力を死守することだ。当然ロシアも中国軍が日本海を聖域化するなど絶対に容認はしない。

つまり、この北朝鮮問題を含む対中国政策において、日本と最も似たような立場にある国は、実はロシアだということになる。

日米同盟の無力化

ではアメリカは、中国の日本海聖域化をどう捉えるだろう。

張成沢の処刑以降、アメリカの東アジアにおける優先事項は、

第一、「中国の第1列島線を退け、南シナ海における航行の自由を確保する」

第二、「東シナ海(沖縄)の在日米軍基地を第1列島線の脅威から遠ざける」

第三、「金正恩政権の打倒と北朝鮮の非核化」

の順にあると考えられる。少なくとも、中国の日本海聖域化を阻止することは、優先順位としてはこれらよりも低い。在日米軍の重要拠点が日本海側にはないためだ。

さらに、アメリカにとっての最大の仮想敵国はロシアである。

中国が日本海を聖域化することにより、「ロシアが困る」というのであれば、むしろアメリカにとって好都合なのだ。まるで、かつて自分たちがスターリンにしてやられたように、中国の軍事力の矛先を、ロシアに向けさせようと考えていても不思議はない。

したがってアメリカが選ぶであろう選択肢は、中国の日本海聖域化を容認する代わりに、南シナ海、東シナ海の第1列島線を引っ込めさせるというものだ。

つまり、

米「南シナ海に出てくんな!」

中「じゃあ北朝鮮潰したら、日本海に出ていくアルよ!」

米「う~ん、まぁ、いっk

おっちゃん「どうぞ!どうぞ!」

こういうことだろう。

だからこそ、冒頭の記事にあるちょめちょめマーク連発の発言が飛び出したと考えるべきだ。

つまり、現在のアメリカは、中国の第1列島線を退け、かつ北朝鮮を非核化させるため、金正恩政権の打倒を画策している可能性が高いということだ。すなわち、第一、第二、第三の目的を一遍に達成しようとしているということである。

しかし、裏を返せば、アメリカは金正恩政権打倒に失敗すると、再び中国と「第1列島線」をめぐって対峙しなければならなくなるというでもある。

そしてこうなると、日本としては苦しくなる。

日本も懸念を抱く南シナ海問題、東シナ海問題においては、日米同盟の存在意義は大きいと考えてもいいかもしれない。しかし、それはあくまでアメリカにとっても重要な問題であるからに過ぎない。仮に日本が同盟国でなかったとしても、これらの問題について、アメリカは日本と共同歩調をとっているだろう。

そしてこと北朝鮮問題においては、日米同盟は全く意味をなさないことになる。

北朝鮮とロシアが接近する理由

そんな日本を尻目に、日本と同じ立場にあるロシアは既に態度を明確化している。

 北朝鮮は7月4日、米国側のレッドラインと目されてきた大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験に踏み切りました。
(中略)
安保理では、これまで北朝鮮が核やミサイルの実験を行うたびに決議、あるいは報道声明を行ってきました。今回は、これまでのどの実験よりも大きな問題であるICBMの発射実験でしたが、その対応をめぐり各国は合意できませんでした。
(中略)
 安保理が失敗に終わった原因は、第1に米国作成の決議案について、ロシアがICBMではなく中距離弾道ミサイルであると主張し、制裁の強化に賛成しなかったからであり、第2に中国も制裁強化に賛成しなかったからでした。
 ロシアは従来、北朝鮮の核・ミサイル問題について、自国の見解を強く主張することはありませんでしたが、今回の安保理では急にしゃしゃり出てきて米国作成の決議案の修正を強く求めました。

引用:『米国から離れる中国、しゃしゃり出るロシア 対北朝鮮対応でズレる思惑』2017.07.16,「THE PAGE」,ワールドリーフ,2017年8月13日アクセス

そう、急にしゃしゃり出てきたのだ。

こうしたロシアの方針に最も動揺したのは中国だろう。黒電話に理解を示す、もう一つの大国が出てきてしまうと、そちらの国に同調せざるを得ない。そうでないと、北朝鮮に「アメリカに同調した」ととられてしまう。

その4で述べた通り、北朝鮮の核ミサイルはすでに北京を射程圏内に入れているのだ。

さらにロシアは、金正恩政権擁護の姿勢を鮮明にしている。

ロシアのプーチン大統領は2日、北朝鮮の核・ミサイル開発に理解を示すかのような発言をした。北朝鮮への軍事的圧力を強めるアメリカをけん制したもの。

 プーチン大統領は2日、北朝鮮問題をめぐって軍事的圧力を強めるアメリカを念頭に、「力による支配が行われている間は、同じような問題が起きる」と主張し、北朝鮮の核・ミサイル開発に理解を示すかのような発言をした。

 プーチン大統領「小国は核兵器を持つ以外に、独立と安全を守る方法がない」

引用:『プーチン大統領、北朝鮮の核開発に“理解”』2017年6月3日 ,「日テレニュース24」,日本テレビ放送網,2017年8月13日アクセス

つまりロシアは、金正恩政権を存続させ、かつアメリカに対する核抑止力をあえて保持させることによって、北朝鮮の属国化を阻止する狙いなのだ。そしてこれは、日本海を防衛するという意味だけではない。

北朝鮮の核に対して米軍が無力であると証明されれば、日本と韓国の国内でも核保有の議論が活発化するだろう。

しかし韓国は軍の統帥権が事実上アメリカにあるため、身動きが取れない可能性が高い。

そうなると、最大の焦点は、内閣総理大臣が自衛隊の指揮権を有する日本の核保有ということになる。

そしてもし日本が核保有国となった場合には、在日米軍の存在意義が大きく損なわれることになる。当然、在日米軍の撤退圧力が強まることは必至だ。

そして当のロシアはそれを狙っているとみられる。まさに一発逆転、王手・飛車・角取りだ。

日本においての『合理性』

 ここまでずっと、「国家は合理的に行動する」と述べてきた。

しかし、数少ない合理性を欠いた国家がある。我が国、日本だ。

まず、現在、北朝鮮の核弾頭ミサイルは東京を射程圏内に入れているとみられるため、それに応じた行動をとらなければならない。現時点で日本にとっての北朝鮮はすでに「核保有国」だ。だからアメリカと一緒になって北朝鮮の核開発やミサイル開発の中止を求めてもまるで意味がない。

あくまで、今大騒ぎしている問題は、アメリカに到達するICBMが核弾頭を搭載できるのかどうかの話だからだ。

正直、もう日本に到達するのであれば、アメリカがどうなろうと知ったこっちゃない。日本としては、もう北朝鮮に敵対的な態度を表すことに何のメリットもないのだ。

むしろ、有事の際、日本に核ミサイルが飛んでくるリスクを自ら高めているだけだ。まさに百害あって一利なしといえる。

しかし未だに日本はアメリカと共同歩調をとり、北朝鮮を厳しく非難している。

ではなぜそのような行動をとるのだろうか。

私が聞きたい・・・。

次に、アメリカの思惑通りに金正恩政権が崩壊してしまうと、日本としては、ロシアと同様に厳しい状況に追い込まれてしまうので、それを阻止しなければならない。

皮肉なことに、金正恩政権が中国の日本海進出を阻止していることになるわけだから、アメリカと共同歩調をとるのは、そうした意味でも最悪の選択肢といえるだろう。

しかし、なぜか日本の行動パターンは、国防上の脅威が迫る度に、

「日米同盟を堅持し~」という枕詞に支配されてしまう。

北朝鮮がミサイルを撃つ度、テレビや新聞は

「こわいなぁ~、やだなぁ~」

と騒ぎ立て、それを見た国民は

「やだなぁ~、こわいなぁ~」

と言いながら「安心感」を政府に求める。それを受けた日本政府は、国民の気持ちを察したかのように「重大な懸念」と称して、

「こわいなぁ~、こわいなぁ~」

と国民に寄り添うような共感の意を表す。

そしてお決まりの「我々にはアメリカがついている」という、多くの日本人が根拠もなく納得しそうな紋所を示し、安心感を与えるのだ。まるで脳みそが働いていない。

これでは一億総淳二状態である。

本当に必要なのは、根拠のない「安心感」ではない。現実の「安全保障」

この件に関しては、アメリカの立場と日本の立場は全く異なるのだから、日本は日本の安全保障を追求し、黙っていればいいだけのはずなのだが・・・。

最後に、北朝鮮がすでに日本にとっての核保有国となったわけだから、それに対抗する合理的な防衛体制を敷き、現実の安全保障を実現させなければならない。その4で述べた通り、現在の北朝鮮のミサイル技術を考えれば、迎撃ミサイル防衛はすでに「無力化」されているといっていい。

全くと言うつもりはないが、ほとんど無駄なのだ。もちろん、ロシアや中国といった核保有国に対しても、もう意味がないといえる。

したがって日本は、現状、「核抑止力」によって北朝鮮に核ミサイルを打たせない体制を整えるしかないということになる。黙ってそそくさと核ミサイルを保有してしまうことが、日本にとって唯一残された合理的な選択肢なのだ。

しかし、日本には核を保有してはならない理由がある。どんなにそれが合理的であっても、絶対に核保有国となってはならないのだ。

その理由は、

私も知らない・・・。

何故かはよくわからないが、核抑止力は持ってはならないらしい。

広島と長崎に原爆を落とされたからだとか、そんな話はよく聞く。しかし正直言ってそれは意味不明だ。それとこれと、どう話がつながるのか、私にはよくわからない。

むしろ本気で再び戦争の惨禍を引き起こさない」と戦没者に誓うのなら、核抑止力を持つ以外に、選択肢はないはずだ。

結局、口では「平和」とか言いながら、みんな本気じゃないのだろう。

とはいえ、日本が現実路線に舵をきり、核保有国となるべく動き出せば、アメリカの横やりが入る可能性はある。当然中国も猛反発するに違いない。

前途は多難かもしれない。

しかし、本来は何が合理的なのかという共通理解を国民が持つ必要はあるはずだ。そしてそうした共通理解の定着が強ければ、他国の干渉を無視できるほどの強いパワーを、日本の政権に持たせることが可能になる。

少なくとも、同じ状況に置かれている韓国よりは、はるかに核保有は容易なのだ。

しかも、現在、アメリカ連邦議会でも、

「北朝鮮が核保有国となってしまった以上、日本の核保有も容認すべきだ」という意見が広まりつつある。トランプ大統領も、大統領選挙ではそう訴えていたのだから、それが本心だろう。

おまけに在日米軍を(もうお金がないから)撤退させるとまで言ってのけた人物だ。だからこそロシアは秘密裏にトランプ大統領を支援したという見方もできる。

確実に核保有のハードルは下がってきているのだ。

いずれにせよ、核保有をするかしないかの判断は、日本国民にゆだねられていると考えていいだろう。

日本人の価値観について

 よく、「争いを止める為に、お互いが主義主張を捨て、理性的に解決すべきだ」

みたいな話をする人がいる。ちょっと前に流行った歌のうすっぺらい歌詞にも、そんな内容のがあった気がする。

でもはっきり言って、そんなの絶対に嘘だ

理性こそ人間の狂気である。

今までに例示した戦争の中に、主義主張で対立した例などあっただろうか。ましてや、恨みつらみの報復合戦、宗教をめぐる対立、挑発合戦の末の暴発・・・

そんなものは一つもない。

アメリカの戦争史、スターリンの謀略、北朝鮮をめぐる各国の思惑、それらの発端は、すべて合理的に説明できてしまう。そしてその合理性は、国家同士の激しい生存競争を勝ち抜こうとする目的が念頭にある。

つまり、これらの争いは、すべての国が必死に生き延びようとした結果なのだ。そして実はアメリカもその例外ではない。そうは思えないかもしれないが・・・

しかしその「国家の存立」というありきたりな目的が、「合理性」というプログラミングとドッキングした途端、殺戮マシーンとして世界中に蠢き、おびただしい数の屍を積み上げてゆく・・・。

2013年に北朝鮮で張成沢が処刑された際、ネットである噂が広まった。張成沢の処刑に用いられたのが、3日間えさを与えられなかった、獰猛な100匹の犬だったというのだ。

真偽のほどはわからないが、もしそれが本当だったとしても不思議はない。

「政権転覆を企むようなことがあれば、お前らもこうなるからな」

という、見せしめだ。

そこにあるのは、狂ったおぼっちゃまの嗜虐性ではない。一国の独裁者としての合理性だ。

そんな残虐な光景ですら、合理的に説明がついてしまうのだ。

もし本当に殺し合いを止めるものがあるとするなら、むしろそれは人間の「情緒」だろう。

目の色、肌の色は違えど、皆、母の腹から生まれ、家族の愛情に育まれながら、望まれて生きてきた同じ人間なのだという「情」が入るからこそ、人は人を傷つけないし、殺せない。

正直、私は、何でもかんでも「合理性」とか「効率性」とかを求める人間は、どこか頭のねじでも吹っ飛んじゃってるんじゃないかと思う。そんなもので人は幸せにならないからだ。

そして多くの日本人は、なんとなくそれに気づいているように感じられる。だからこそ「平和主義」なる考え方が、消極的に受容したものであるとはいえ、これほどまでに定着したのだろう。

その理想を否定するつもりはないし、情緒的な感性は私自身の中にもしっかり存在している。

しかし、それらの価値観は、国内の「人間対人間」の間でしか成立し得ない。

国家は人間ではない。そして国家に「情」はない。

あるのは「合理的な力」と、さらにそれを制御する「合理性」だけだ。その中で、殺るか殺られるかの生存競争を皆必死になって繰り広げている。

あくまで国家は合理的に行動する

それは、対外的に見れば「国家は化け物だ」という意味に等しい。

まさに世界中狂気の沙汰だといえる。

しかし古今東西、それが現実なのだ。

世界が狂っているのか。日本人がただの阿呆なのか。

そんな禅問答をするいとまが、今の日本に残されているのだろうか。


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